学生マンション投資

英国の学生マンション投資が日本でも注目を浴びているのは、ここ3-4年よく耳にする。日本の海外不動産投資会社で英国で取り扱っている物件のほとんどが学生マンションみたいな印象をうけ、英国不動産=学生マンションみたいな風潮がある。しかしながら、なぜか現地英国ではほとんど学生マンション投資なんて聞いたことがない。日本人から聞いた事はあるが、嘘みたいな利回りの良さが人気なのと価格がお手頃と言った事もあり買う人が多いようだ。

今回はそんな私も知らない学生マンション投資について検証してみた。

ネット利回り8%!

 

学生マンション投資案件をいくつか調べてみるとどれも「3年間利回り8%保証」などのうたい文句が目立つ。価格は場所によって事なるが£65,000-90,000ぐらいと日本円でも1300万円以下で購入が可能だ。確かにロンドンなどでは考えられない価格のため、試しに買ってみてもいい値段である。中には3年後20%増しで買い戻しオプション付きなどもある。キャピタルゲインも入れれば、10年以下で投資金額を回収できてしまう事がほぼ保証されているような投資案件である。ロンドンで価格が高騰し、キャピタルゲインで2倍になり7-8年で投資金額を回収できたなどというのは、よく聞くが常に頭打ちと言われてきた事からも買う段階では誰もが半信半疑であっただろう。それとは異なり、この場合ほぼ保証されているようであり少々疑ってしまいたくなってしまう。

海外投資家がターゲット

 

まずどのように販売されているかを検証しよう。学生マンションの販売は、新築で着工前の計画段階で販売がされているようだ。どの物件をみても計画段階で契約をし、50%を前金で払い、完成・引き渡し時に残りの50%を支払うようなしくみになっているようだ。私も買う事を前提にローンが組めるか調べてみたが、学生マンション向けの投資ローンは存在しないようだ。ネットなどで調べたところ英国人でもローンは組めないそうである。通常利回りが確保できる物件だとイールドギャップが十分に取れるので、ローンを組んで投資した方が価格が長期上昇傾向にある英国では合理的である。となると、本案件はキャッシュバイヤーが対象になる。キャッシュバイヤーが中心という事は、ターゲットは海外投資家だ!中国系・アラブ系・ロシア系の投資家はキャッシュで買う事が多い。英国人であれば、例えば£80,000キャッシュで買うか、LTV75%£320,000の物件を買うかを比較する事になる。この低金利時代、おのずと英国人は後者を選ぶであろう。英国でこのような投資案件をあまり聞かない理由がこれでわかった。

 

家賃が高く取れる

 

ではなぜ、このような高利回りが実現できるのかを検証してみたい。学生マンションの賃貸を扱っている会社をいくつか検索してみたところ、学生マンションはその地域の1LDKと同じぐらいの家賃で貸し出されている。学生マンションの部屋は通常20平米前後のワンルームであり、1LDKのマンションは35-45平米ぐらいであるから広さあたりでは1.5倍以上になる。ただ、学生マンションの場合、一階にかなり充実した共有スペースを設けている。大勢がリラックスできるラウンジ、プールテーブル、かなり本格的なジム、中にはミニ映画館も備えているところまである。英国に留学する学生でヨーロッパ外からくる学生はほとんどが富裕層であるから、このような施設をみた海外留学生は、ちょっと高い家賃を払っても学生マンションに住みたいと思う事がよくわかる。また留学生の親としても、セキュリティー面からもこのようなマンションの方が安心である。

従来、英国の学生は通常友達同士で戸建てを個人のオーナーから賃貸する事が慣習であった。このような形態は今でももちろん存在するし、恐らく英国人の学生たちの大半は、まだそのようにしていると思う。しかしながら、このようなプライベートのオーナーが所有し、学生用に貸し出している家は通常あまりいい状態ではない。お金のない学生たちなので、このような汚い物件でも若いので気にせず借りるが、最近の学生はそうでもないようだ。価格も3-4人で戸建てをシェアーするので学生マンションの半額か3分の2ぐらいで借りられるが、クオリティーは歴然とした差がある。

上記の事からも何となく、利回りが高い合理的な理由がわかるような気がしてきた。

金持ち海外留学生はイギリスは非常に多いし、海外留学生は増えていくばかりだ。

リスクはあるか?

 

上記を検証する限り投資内容としては、理にかなっているし高家賃も実現できそうなことがわかる。ただ、不動産マーケットが成熟している先進国のイギリスで8%も保証しないといけないからには、何か理由があるように思えてならない。いい物件であれば、そんなに高い利回りを保証しなくても売れるはずだ。

初めに疑問に思うのは①高い家賃は持続可能なのか?という点だ。これは単純に供給が増え続けてしまうと価格競争が起こってしまうため、ある程度一般住宅と同等の水準まで下がってしまう事が最悪考えられるのではないか?しかしながら需要は海外留学生の増加からも緩やかに増えていっている。と考えると一般住宅との中間ぐらいの賃料まで下がる事を最悪予想しておいた方がいいかもしれない。だいたいネット8%保証されている都市の一般的な住宅の利回りはネット5%前後だ。よって6%ぐらいまでは供給が増えすぎた場合は、下がるかもしれない。そうは言っても、学生都市で人気の街は、まだまだ供給が少なく、春先には大学が始まる9月からの入居希望の予約が一杯になってしまうというくらいなので、場所によってはまだまだ先の事かもしれない。

まあ、これについては8%が6%になったところでまだまだ投資案件としては魅力的なのでいいと思う。一方で、保証期間が3年などと期限付きになっているが、この期限を過ぎた後、貸出はどのようにされるのかというのが、よくわからない。個別に管理会社と契約して貸し出しを行うとしたら、9月などの学生が引っ越す時期を逃したら、一年間空室になるリスクなどあるのではないか?

次に気になるのは、②デベロッパーである。みる限りどのデベロッパーも今まで聞いたことがないデベロッパーで大手の不動産会社などは参入していないようだ。どちらかというと中小企業がデベロッパーであるケースが多いようだ。この点はやや不安に思わざるを得ない。小さいデベロッパーになればなるほど資金力はないので自転車操業になる可能性は大手に比べ高いと思う。実際、学生マンションではないが資金繰りが悪くなり開発が頓挫してしまったようなケースはリーマンショックの後などは、聞いた事がある。また、このようなデポジット(頭金)の比率が50%-75%と非常に高いところからも、すべての建設資金を投資家から徴収している事がわかり、個人の投資家との共同出資型のプロジェクトだという事は認識しておいた方がいい。従来のプレビルドとは、全く違い、一般的なプレビルドは頭金10-20%で、それも頓挫した時にはある程度デベロッパーが入っている保険でカバーされる。そして残りの80-90%は銀行などに融資を受けて建設がされ、建設リスクは、デベロッパーと銀行が負うものとなる。しかしながら学生マンションの場合は、そのような保証は全くないようだし、銀行から借り入れをしていないという事は、デベロッパーは何も担保に取られていないという事を意味する。

③転売需要がまだわからない。このような学生マンション販売は2013年ぐらいから行われ始めた非情に新しい投資方法であるため、二次マーケットへの転売がまだあまりないようである。合理的に需給が成立すれば、二次マーケットが発生し、転売の規制などはもちろんないので、ある程度は問題ないと思う。利回りがある程度確保でき、建設リスクはなくなる訳であるから合理的にみて、売りやすいと思うし、買う側は実績に基づいて投資判断ができるため、より分かりやすい投資案件となると個人的には思う。また、学生マンションが増えすぎたら、近年流行り始めている若い大人用のCo-Livingマンションに転用は簡単にできるような気がする。いずれにせよ、このような学生マンションはかなり多くあるようなので、二次マーケットが確立されてくるのも、時間の問題だと思う。不動産投資は基本10年単位で長期保有する事をおすすめしている私としては、そのスタンスだけ守れば問題ないと思っている。ただ、今後も不動産ローンなどは、つけられないオルタナティブな不動産投資である事は忘れてはいけない。

 

まとめると、不動産投資としては利回りベースの投資家が多い日本人から賛同を受けやすいのは、非常に理解ができた。ただ、ロンドンなどキャピタルゲインを主としている不動産を長くやってきたものからすると、なんか投資と保証がイコールになっているところがどうも気になる。

老人マンションなどと同じで、オルタナティブなレジ物件は、一般住居よりキャピタルゲインは限定的で、学生マンションも同様な気がする。特に利回りによって販売価格が設定されており、その保証利回りがマーケットの利回りより高いため、キャピタルゲインは望めないように思う。キャピタルゲインに懐疑的である日本の投資家には、理解しづらいかもしれないが、ネット利回り4%+平均キャピタルゲイン3-4%で主要マーケットのプレビルドの方が安心でき圧倒的にリスクは少ない。ただ、日本にいると年3-4%のキャピタルゲインするかという判断ができないのだと思う。

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